中国福建省アモイ市のすぐ対岸にある金門島は…


 中国福建省アモイ市のすぐ対岸にある金門島は台湾が実効支配する。1958年8月23日から44日間、中国軍はこの島に約47万発の砲弾を撃ち込んだ。砲撃から60年が過ぎ、蔡英文総統はフェイスブックに「台湾人が故郷を守る決心を砲弾で変えることはできない」と投稿した。

 開戦当時、米国は金門島と馬祖島が米華相互防衛条約の範囲に含まれないとして、台湾側に島の放棄を要求。蒋介石は拒否し、断固死守の姿勢を貫いた。結局、米国の空母艦隊派遣で中国が一方的に停戦した。

 中国出身の在英作家、ユン・チアン氏は『マオ―誰も知らなかった毛沢東』(講談社刊)で、中国の金門砲撃は米国との緊張を高めることでソ連から核兵器製造技術の提供を受けるのが目的であったとしている。

 米国が中国を核攻撃すれば、中国と同盟を結んでいたソ連も核戦争に巻き込まれる恐れが出てくる。その危機感をあおることを狙ったという。

 普通であれば、こんなリスクの大きい挑発行動はできない。しかし、軍事大国建設のために何千万人もの餓死者が出ることを承知で「大躍進」を強行した毛だ。その可能性は否定できない。

 『マオ』では、毛が朝鮮戦争に参戦したのも、共産主義国への友誼(ゆうぎ)からではなく、ソ連から軍事産業の移転を引き出すことが狙いだったとしている。そのため、金日成が望んだ停戦を1年半近く先に延ばしたという。こんな戦略的あざとさは今の中国にも引き継がれている。