写真家の山崎博さんは光の不思議な豊かさと…
写真家の山崎博さんは光の不思議な豊かさと時間の変化をエッセンスとして作品を作り続けてきた。カメラの機能を熟知した上で、肉眼とは異なる、写真にしかできない光景を捉える。
その代表作が〈HELIOGRAPHY〉の連作だ。「太陽が描く画」という意味で、海から昇る太陽を強力なフィルターを使って長時間露光し、フィルムに受け止める。空は暗く、太陽は光の棒となり、海面に光の量が定着している。
東京都写真美術館で教育普及を担当している学芸員の石田哲朗さんは、この作品を説明を抜きに子供たちに見せてみた。「作家は何を考えてこのような作品を制作したのか」と聞いてみる。
写っているのが太陽であることさえ自明ではない。「これは月だ」「いや太陽だ」「夜だ」「いや昼だ」と彼らの想像が広がっていく。山崎さんは自作を光学的事件と呼んだが、子供たちの反応はまさに事件に対するもの。
石田さんはスクールプログラムで、作品を見た子供たちが自由に発言し、見方を深めていくという対話型の作品鑑賞の場を設けた。それは無限の広がりを見せて、自分の見方の浅さにショックを受けたという。
その体験から、見る人に自由な対話を促すような展覧会ができないかと熟慮し、実現させたのが「夢のかけら」展だ。写真の見方に決まった答えなんてない、だから楽しい、という展覧会。見る人の想像力が育まれ、感性が養われるだろう。11月4日まで。