踊る阿呆(あほう)に見る阿呆……。全国に…


 踊る阿呆(あほう)に見る阿呆……。全国に知られる徳島の阿波おどり。ところが今年、4億円を超える累積赤字の処理をめぐり、市と主催者の一つである市観光協会が対立し、祭りは開かれたが、両者の角逐が最後まで尾を引いた。

 フィナーレとして行われてきた「総踊り」の中止決定に対し、反発した踊り子団体が強行。その影響などから来場者数は前年を大幅に下回り、過去最低となった。

 これに対し、NPO日本の祭りネットワークの苦田秀雄副理事長は「元来、祭りというのは、地域の住民が自分の金を持ち寄って運営していたが、規模が大きくなるにつれて本来の趣旨から外れ、動員数や収益を追求するイベントのようになっている」と分析し、住民の資金分担や積極的な協力の必要を強調している。

 徳島と言えば、住民の粘り強い団結力、一体感でやり遂げた明治期からの吉野川の歴史的治水事業で知られる。こうした事実を思い起こすと、今回の阿波おどりの顛末(てんまつ)にはやはり住民不在を感じざるを得ない。

 阿波おどりだけではない。今や郷土の伝統を受け継ぐ全国の祭りの大半が、財源の安定確保に苦しんでいるという。地元の若者が激減し、みこしの担ぎ手要員にアルバイトを頼むというところも少なくない。

 「ふるさと再生に必要なことは、まずそこに住んでいる人たちが自分の町に誇りを持ち、自信をつけることだ」(東大名誉教授の故木村尚三郎さん)。祭りの変貌に地方の衰退を見る。