「読書術」についての本というと、本を効率的…
「読書術」についての本というと、本を効率的に読む方法やテクニックを教えるものだと思ってしまう。が、中には「読書について自分はこう考える」という主張を含んだタイプの本もある。
『理科系の読書術』(中公新書)の著者の鎌田浩毅(ひろき)氏は、京都大教授で火山学が専門だ。教えている学生も理科系が中心。その一人が「本を読むのは苦行」と訴えてきた。京大生がそう言うのだから、著者は「強いショックを受けた」と告白している。
だが、著者は「それじゃこれからやっていけないよ」などとは言わない。考えてみれば、学生の多くはこれまで学校で「読書の仕方」を一度も学んでいない。教授が指定した分厚い専門書を読むのが苦手でも不思議はない。
それらを踏まえた上で、読書にまつわる根深い「完全主義」を批判する。読書は途中でやめてもよい。飛ばし読みもOK。無理して読み切る必要はない。
現物の代わりに書評を読むだけでも、何もしないよりははるかにマシ。本にこだわる必要はない。耳学問でもいい。教員や学友の話の中には有益な情報が含まれていることもあるからだ。
「原典を読め」も完全主義だ。日本語訳でも十分だし、解説書を読むのは少しも恥ずかしいことではない。原典主義は、大学生がエリートだった時代のなごりにすぎない、と明快だ。「ノーベル賞の論文だって完璧なものではないんですよ」との言葉には「そういうものなのか!」と何だか安心する。