北アルプスを横断して富山と長野を結ぶ…
北アルプスを横断して富山と長野を結ぶ「立山黒部アルペンルート」が全線開通した。冬季閉鎖から約5カ月ぶりで、高さ17㍍に及ぶ雪壁「雪の大谷」が開放され、最高地点の室堂付近は多くの観光客でにぎわった。
雪壁の高さは積雪量とは関係ない。室堂付近の積雪量は640㌢。それにしてもすごい量だ。ケーブルカーやロープウエー、トロリーバスを乗り継いでたどるこのルートが全通したのは1971年。
室堂への時間が短縮されたが、昔の登山者は有料道路が通る弥陀ヶ原を抜ける道ではなく、その南側を流れる湯川谷沿いにさかのぼって、今は存在しない立山温泉から松尾峠を経て室堂に行く道が使われていた。
登山史上特筆される遭難が起きたのは1923年1月で、弥陀ヶ原から松尾峠の間で板倉勝宣が吹雪で凍死するという出来事。同行者は槇有恒と三田幸夫で、一行は体力経験とも十分な山男だった。
槇が『山行』で詳しく記している。夏には上に向かうバスから右手に見える尾根だ。アルペンルートが開通したといっても、そこはまだ冬の山。散策できるのは室堂付近だけだ。
5月までは山岳スキーやスノーボード、登山をするには入山届の提出が必要で、位置情報を発信する雪崩ビーコンの携帯も不可欠。ライチョウ保護区に立ち入らないなどルールも守らなければならない。吹雪になれば視界が利かず、広い空間でルートを見失った例は多い。下界では想像できない世界だ。