ニクソン元米大統領は、著書『指導者とは』…


 ニクソン元米大統領は、著書『指導者とは』(邦訳・徳岡孝夫)でソ連首相を務めたフルシチョフについて、こんなことを書いている。「『個人的な友情は、必ずしも国家間の友好につながらない』という鉄則の、生き証人のような男だった」。

 さらに「フルシチョフから、続いてブレジネフから、そうした態度で迎えられた経験のある私は、トルーマン大統領がスターリンのことを親愛の情をこめて『グッド・オールド・ジョー』と呼んだ気持ちがよくわかる。しかし、三人のどれをとっても、計算ずくめの友情が外交上の譲歩に結び付くことはなかった」。

 今回の安倍晋三首相とトランプ大統領の日米首脳会談は、これまで何度も行われた中でも、特に両国の関係と運命を左右する重大な会談だ。

 両首脳は個人的にも極めて良好な関係を築いてきたが、日米が簡単に折り合えない部分があるのは厳然たる事実。「個人的な友情は、必ずしも国家間の友好につながらない」という言葉が思い返される。

 ただ、ニクソン氏とソ連の指導者たちとの関係と、日米両首脳の関係には大きな違いがある。イデオロギーで根本的に相いれない米ソと違い、日米は同盟国であり、自由と民主主義という価値観を共有していることだ。

 トランプ氏のディール(取引)外交を警戒する向きもあるが、程度の差こそあれ外交にはディールの要素がある。安倍首相には「個人的友情」と「共通の価値観」を最大限生かしてほしい。