「桜が咲いた2か月後が、その地方のそらまめ…


 「桜が咲いた2か月後が、その地方のそらまめの旬」(白井明大著『日本の七十二候を楽しむ』)だそうで、東京の空豆の旬はまだ1月ほど先のはず。それがスーパーのお惣菜売り場では、早々と「そらまめとエビのつまみてんぷら」が並んでいた。

 豆を包む房が空に向かってなるから空豆の、やわらかな浅緑の食感がいい。子供の頃、畑でよく見掛けた、アイシャドーを洗い流し忘れた淑女のような黒縁の花を思い出しながら味わった。

 今年は空豆の登場も早いが、桜の後に続く花の開花も早い。街路樹では例年だと、桜に続いて小ぶりの紅、白、ピンクの花を息長く咲かせるハナミズキの淡い色を見上げ、この花を贈ってくれた米国との友好に思いを寄せる季節である。

 それが視線を下ろすと、早くもハナミズキを押しのけるように、生け垣のツツジや皐(さつき)が咲き乱れている。同じ色でも鮮やかな原色で季節の主役交代を催促しているようだ。

 ツツジは其角(きかく)に夕涼みを詠んだ「たそがれの端居(はしい)はじむるつつじかな」があるように、初夏が迫る晩春の花。近くの公園では、ツツジの次に花を咲かせる藤までが、藤棚から高貴さを漂わせる白紫の花房を揺らし始めた。

 晩春の花々の早まる開花は、例年にない暑い夏になりそうだという気象庁の長期予報を裏付けていよう。14日で震災から2年が過ぎた熊本。被災地の仮設住まいが続く人たちへの、猛暑に備えての対策の必要を告げている。