春の陽気に誘われ、東京・六本木の国立新美術館…
春の陽気に誘われ、東京・六本木の国立新美術館に「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」を観(み)に行った。スイスの実業家エミール・ゲオルク・ビュールレの印象派を中心としたコレクションから64点を展示している。
気流子の目当てはセザンヌの「赤いチョッキの少年」。ポスターなどでは、ルノワールの描いた少女像「可愛いイレーヌ」が用いられている。2作とも画集などでよく目にする名画だが、そんな絵が個人コレクションだったとは。
他にもアングルの「アングル夫人の肖像」やピサロやモネの風景画など逸品がそろっている。資産を投じるのは、自分の手元に置いて毎日眺めていたいと思う作品だからだ。個人コレクションの良さはそこにある。
とはいえ、コレクターの審美眼が確かなものでなければ、コレクションの質は確保されない。ビュールレは「選ぶ者のスタイルがコレクションを決める。それ自体が創造行為」であると言っている。
ただ、「可愛いイレーヌ」の「絵画史上、最強の美少女」と、いかにも今風のキャッチコピーには鼻白んでしまう。日本の美術ファンのレベルをちょっと低く見ているのではないか。
ダビンチの「モナリザ」1点を観るために、会場の東京国立博物館に50日間で150万人が殺到した昭和49年頃と違い、海外の美術館を訪ね西洋絵画の傑作に触れた美術ファンは多い。鑑賞眼も当時よりはるかに高くなっていることを考慮すべきだろう。