イラク日報問題、これ以上信頼を揺るがすな


 政府が「存在しない」と説明していた陸上自衛隊のイラク派遣部隊の日報が見つかった問題で、陸自が昨年3月には存在を把握していたが、防衛相らには1年間にわたって報告していなかったことが判明した。

 財務省の決裁文書改竄(かいざん)など不適切な文書管理が相次いでいる。国民の信頼が大きく揺らいでいることを政府は重く受け止めるべきだ。

防衛相に1年間報告せず

 日報は2004年1月~06年9月の派遣期間中の408日分で、約1万4000㌻。現地部隊の活動や治安情勢などが記録されているとみられる。

 当初の防衛省の説明では、陸自研究本部(現・教育訓練研究本部)が今年1月12日、陸上幕僚監部衛生部は1月31日に日報の存在をそれぞれ陸幕総務課に連絡。陸幕が統合幕僚監部に報告したのが2月27日で、防衛相への報告は3月31日だった。

 ところが実際は、昨年3月27日に研究本部の教訓課長が存在を把握していた。当時の稲田朋美防衛相ら政務三役と背広組と呼ばれる内局には報告しなかったという。

 1年間にわたり報告がなかったことで、組織的隠蔽(いんぺい)を疑う見方も出ている。日報をめぐっては、稲田氏が昨年2月の衆院予算委員会で「見つけることはできませんでした」と答弁していた。答弁との矛盾が露呈することを避けるためであったとすれば問題だ。

 今回の問題について、小野寺五典防衛相は国会答弁で「しっかりうみを出し切る。シビリアンコントロール(文民統制)の中で真相を明らかにしていく」と述べ、大野敬太郎防衛政務官をトップとする調査チームで全容解明を図る考えを強調した。究明を急ぐのは当然だ。

 このところ、公文書の不適切な管理が相次いでいる。裁量労働制に関する厚生労働省の不適切なデータ問題や、財務省の決裁文書改竄などで、政府には国民の厳しい目が注がれている。これ以上、信頼を揺るがすことがあってはならない。公文書管理のルール厳格化など再発防止策を徹底すべきだ。

 野党は安倍政権への攻勢を強める構えだ。だが今回の問題に関連して、民進党の大塚耕平代表や共産党の志位和夫委員長が「憲法を語る資格はない」と述べ、安倍政権の憲法改正に向けた動きを批判したことは理解し難い。公文書管理と改憲は、全く別の課題のはずだ。特に日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、憲法9条の改正は重要なテーマだと言える。

 内閣支持率が下落する一方、野党の支持率は低迷している。財務省の文書改竄などで野党が政府を追及するのは理解できるが、単に「安倍政権打倒」を目指すだけでは国民の支持は得られまい。

野党は建設的議論を

 南北、米朝首脳会談を控える中、今月中旬には日米首脳会談が行われる。北朝鮮情勢は重要な局面を迎えており、国会でも日本外交の在り方について活発な議論が求められる。

 野党は政府を批判するだけでなく、重要課題について建設的で現実的な代案の提示に努めるべきだ。