「屋根の雪ずりて厚さを見せてゐる」(高浜…


 「屋根の雪ずりて厚さを見せてゐる」(高浜年尾)。日本海側や北海道・東北では大雪が降っているが、東京ではまだ本格的な降雪はない。

 冬というと、すぐに雪の情景を思い浮かべるのも、気流子が北国生まれだからだろうか。とはいえ、北国でも日本海側と太平洋側では雪の降る量はまったく違う。例えば、福島県で大雪の被害があるのは会津地方で、中通りや浜通りはそれほど降らない。

 長野県の豪雪地帯に生まれた小林一茶の句「是がまあつひの栖か雪五尺」には厳しい冬の実感があふれている。しかし、どんな過酷な場所でも自分のふるさとならば格別なものがあろう。「まあ」という詠嘆には、そんな一茶の気持ちが表れている。

 雪にロマンチックなイメージがあるのも、きれいなものも汚いものもすべて白いベールで覆うせいかもしれない。さまざまなものがむき出しだった野原や建物が雪で化粧していると、まったく新しい世界が出現したように見えてくる。結婚式でも純白の花嫁衣装は、純粋や純潔、新しい出発などを示しているのだろう。

 枯れ葉が落ちた木々を埋め尽くす冬の雪景色。生から死、死からの再生、そんな人生のサイクルを思わせるのが日本の四季である。

 1月中旬になって、年頭の決意や目標がいささかアイマイになっているのではないか。目まぐるしい毎日の中で、情報が洪水のようにあふれているせいかも。今年は過剰な情報に振り回されないようにしたい。