世界各地で相次ぐセクハラ告発について、…


 世界各地で相次ぐセクハラ告発について、仏女優カトリーヌ・ドヌーブさんと仏女性作家らが連名でルモンド紙に「口説く自由は認められるべきだ」という公開書簡を発表した。

 それに対し、米ハリウッドのセクハラ批判運動の発端となる告発に加わったイタリアの女優アーシア・アルジェントさんは「ドヌーブさんらは(誤った発言で)後戻りできないところまで行ってしまった」と非難。フランスの代表的なフェミニストのグループも「レイプの擁護者たちだ」と猛反発している。

 もとよりハリウッドの性道徳の乱れはひどいもので、今回の運動がセクハラ一掃の契機になってほしいと願う。実際、連動して他のセクハラの告発も続き、米国の上下院議員や英国の国防相らが地位を失ったりしている。

 ただ、こうした運動は、運動体が常に拡大しなければ機能しないので、衆を恃(たの)む方向に進まざるを得ない。告発すれば英雄視されたり、運動に同調しない女性を裏切り者と見なしたりする風潮も高まりかねない。

 1970年代の過激なウーマンリブ運動がそうで、この運動は結局、男女間だけでなく、女性同士の間にも不信感が募り自滅した。ドヌーブ氏らの書簡への反対派の反応には似たところがある。

 セクハラは被害者の人格をひどく傷つける。この種の運動の主宰者には、告発さえできないほど深く潜行するセクハラや性犯罪への対処について、力不足だという自覚と謙虚さが要る。