明けましておめでとうございます。物理学者…


 明けましておめでとうございます。物理学者アインシュタイン博士の言葉に「神は老獪(ろうかい)だが悪意はない」がある。かの相対性理論を発見するまでの苦心のほどがよく分かる。

 あまねく宇宙全体に及ぶ現象の解明は難しく、それを敷いた神の悪賢さには辟易(へきえき)することもある。しかしそれを解き明かした暁には、その現象の法則性、神の宇宙創造の意図も明らかになる――といった意味だ。

 そのアインシュタイン博士が100年も前に予言した重力波を初めて直接観測した米国の科学者3氏に昨年、ノーベル物理学賞が授与された。さらに授賞決定直後、中性子星同士の合体の際に生じた重力波が初めて検出された。この合体は、実に1億3000万光年離れた現象だった。

 地上の1世紀来の難問が、1億光年をはるかに超える宇宙の現象によって解明されたというのがミソ。地球は、そんな気の遠くなるような世界からも影響を受けていることの実証である。

 地上のさまざまな問題を、地球外の現象の助けで解き明かす方法は、例えば、生命の源となる物質が宇宙から来たのではないかとする研究にも応用され、今年はその進展も期待される。「宇宙を知ることは人間を知ること」という科学者の信念である。

 宇宙の無数の天体の影響を受け、安定し秩序立って運行するこの地球星。その中で「平和の理想」を実現しようとする人類の日々の営為とその責任。厳粛な気持ちにさせられる。