今年もとうとう押し詰まって、きょうは大晦日…
今年もとうとう押し詰まって、きょうは大晦日(おおみそか)。ゆっくり1年を振り返り、年越しそばを食べて、紅白歌合戦をというのが一番平均的な過ごし方だろう。しかし江戸の昔、長屋の貧乏人には、いかに借金を返すか悩ましい日でもあった。
大晦日に聞く落語に「芝浜」「掛取り万歳」「尻餅」などがある。このうち「掛取り万歳」は、いろんな言い訳やパフォーマンスで借金取りをけむに巻くという噺(はなし)。「尻餅」は、餅をつく金がない夫婦が、近所の手前、女房の尻を叩(たた)いて音を立て、餅をついている振りをするという噺だ。
いずれも長屋住まいの庶民の話だが、その貧乏を笑いにしてしまうのが日本の落語である。貧乏を笑い飛ばす、面白がるという文化は、世界でも珍しいのではないか。
こんな文化が生まれたのは、一つには貧乏でも何とか生きていけたということがあるだろう。そして、川柳の「江戸っ子の生まれぞこない金を貯(た)め」ではないが、金持ちであることにあまり価値を置かない気風があったためと思われる。
自身ずいぶん貧乏をした5代目古今亭志ん生が、昔の大晦日の様子について語った短い動画がユーチューブにアップされている。それによると、昔は大晦日に家にいると借金取りが来るので寄席に逃げ込む人が多く、大晦日でも寄席は開いていたというのである。
これこそ落語のような話だ。いろいろ難しいことがあっても、んなのどかさを失いたくないと思う年の暮れである。