「兎も角も御用納に漕ぎつけし」(松山一雪)…


 「兎も角も御用納に漕ぎつけし」(松山一雪)。御用納めも終わり、後は大みそかを待つばかり。今年を振り返れば、それこそいろいろな出来事や事件があったが、それも少しばかり記憶が薄れている。

 街には普段より人気のない風景が広がっている。スーパーなども、売り場の一角が松飾りやおせち料理用に切り替わっている。おせちは、昔は家事から女性を解放するための保存食といった面もあった。火を使った料理をしないで食べられるものが中心だった。

 それが変わってきたのは江戸時代からで、おせちは食べるよりも飾ることが主になっていく。これはおせちが武家社会から発したからとも言われている。重箱などに詰め、見た目にもきれいなものへと発展していく。

 おせちは正月料理だけにお祝いの要素が強く、豪華になるのは当然だ。が、核家族の多い現在は質素なものも人気のようだ。驚いたのは、コンビニなどで100円で買える「おひとりさま」用のおせちが並んでいたこと。量は少ないが、正月気分を味わうことができるのは確かだ。

 家族で一緒に食事を取る機会が減り、1人で食べる「孤食」化が進んでいる。そんな社会の反映なのだろう。日本の伝統的な家族の在り方が失われつつある。

 「来年のことを言えば鬼が笑う」ということわざがある。確かに現在の国内外の情勢を見ると今後どうなるか分からないが、このような中でも来年は家族の絆を強く結ぶ年にしたいものである。