「秋風や竹林一幹より動く」(高浜年尾)。…
「秋風や竹林一幹より動く」(高浜年尾)。秋は抜けるような青空に代表されるが、その半面、雨が多い季節でもある。東京はここ数日、冷え切った雨に覆われていた。一挙に冬が到来したかのような感じだ。
秋は「芸術の秋」でもあり、芸術祭やコンサートや絵画展が盛んである。この際に、芸術に親しむ機会を持ちたい。
昭和12(1937)年のきょう亡くなった詩人の中原中也には、「盲目の秋」(『山羊の歌』所収)という作品がある。「風が立ち、浪(なみ)が騒ぎ、/無限の前に腕を振る」という冒頭から始まる詩は、秋が心を騒がせる季節であることを描いている。
それは苛(いら)立ちや憧れや夢を持つ少年時と重なる。その焦燥感が「無限の前に腕を振る」というリフレインとなっているのである。少年の心の揺らぎを見事に表現していると言えよう。
秋の寒さの中で熱戦を展開しているのが今回の総選挙。きのうまで選挙カーの声が街中を駆け巡っていたが、きょうはその結果が表れる投票日である。どの候補・党に票を投ずるか、それによっては今後の政治情勢が大きく変わっていく可能性がある。大事な1票を投じたい。
今回の選挙は最初、希望の党が台風の目だったが、公認候補選別の際の「排除する」という小池百合子代表の発言で潮目が変わったと言っていい。「物言えば唇寒し秋の風」という芭蕉の俳句がある。この句ほど、今回の選挙のありようを象徴している言葉はない。