平成とはどのような時代なのか。東京都写真…
平成とはどのような時代なのか。東京都写真美術館ではこのテーマをめぐって毎年、春期、夏期、秋期と3期にわたって、収蔵品の中から、それぞれ別の視点から作品を選んで展示する。
夏期の展覧会は作家と被写体の関係に着目したもので、「コミュニケーションと孤独」という題だ。スマートフォンが普及し、大学ではコミュニケーションを学問の対象とする一方、大幅に減ったのが人と人との直接対面。
テレビでは人の顔がモザイク処理され、肖像権や個人情報保護の観点から、人物を撮影することが容易ではなくなった。展覧会の取材に行けば、人を写したことでトラブルが起きないようにと注意を受ける時代なのだ。
このような関係性の背後にある社会状況を象徴するような作品が、北島敬三さんの〈PORTRAITS〉のシリーズだ。同一人物を同じセッティングで何年にもわたって撮影し、それらを並べている。
人物は無表情で、特徴のない服装をしていて、髪や肌の表情に歳月の流れたことがわずかに感じられるだけ。作家と被写体との関係は何も感じられず、遠く隔たったまま、何年たっても変わらない。
高橋ジュンコさんの女性ポートレートも、彼女らの職場で撮影した作品だが、透明なアクリルキューブの向こう側に見えるだけで素顔は分からない。分かるのは「らしさ」だけ。情感豊かな作品も少なくないが、文化状況の孤独感から未来は見えない。9月18日まで。