福島第1原発3号機の核燃料を納めていた…
福島第1原発3号機の核燃料を納めていた圧力容器の下部に、溶融物が垂れて固まったような物体のあることが水中ロボットによって確認された。東京電力は、炉心溶融(メルトダウン)で溶け落ちた核燃料(デブリ)が含まれている可能性が高いとみている。
デブリだと確定すれば、その取り出し方法の検討に着手できる。事故の事後処理について世界が注目する中、今後も技術を駆使し、少しでも早く廃炉を実現してほしい。
一方、事故の起きた「軽水炉」は、発熱がさらなる発熱を招く「熱暴走」という脆弱(ぜいじゃく)性を抱えていることが世間に広く知られるようになった。熱暴走が起こりにくい原子炉の開発を急ぐべきだが、政府や電力業界から、なかなか声が出てこない。
次世代炉の一つに、溶融塩を1次冷却材として使用するトリウム溶融塩炉がある。原子炉の構造が単純なため、核反応制御が容易で暴走の危険性が低く、軽水炉原発の構造的な問題点を解決できる。
事故後、電力中央研究所原子力技術研究所の研究者に聞いたが、「本気になってやり始めれば、2020年代の終わりにできるかもしれない。中国は力を入れており、計画では30年としている」と話していた。
戦後わが国は、軽水炉の実用化に多額の資金と多くの人材を動員した。そのため、トリウム溶融塩炉といっても政府の予算は現在まったくない。軽水炉は優れた技術だが、イノベーションを怠ってはいけない。