オニヤンマの季節。高速で飛んでいるのを…


 オニヤンマの季節。高速で飛んでいるのを見掛けることもあるし、止まって休んでいるのを目にすることもある。その姿と形が強い印象を残す。

 「ヤンマとぶ伊豆南端の尾根の上」という句がある。飯田龍太(2007年没)の作だ。明瞭で平明な句だが、味わいは深い。高い所を飛ぶヤンマを下から見上げているのだろう。

 ヤンマは大型トンボの総称だ。トンボ目(もく)ヤンマ科。強い飛翔力が特徴で、日本では約20種が知られる。中でも、オニヤンマとギンヤンマが有名だが、尾根を飛んでいるというのだから、ここはオニヤンマだろう。「丘陵地や低山地に多い」と図鑑には記されている。一方ギンヤンマは、池や川など水辺に多い。

 オニヤンマは飛び方が絵になる。10㌢程度の虫が相当の速さで飛ぶ。大きさと重量感とスピードが記憶に残る。黒に黄色の紋も強烈だ。

 ヤンマに限らないが、トンボは祖霊が姿を変えてやって来たもの、とも言われる。根拠ははっきりしないが、何となく了解できる。そういえば、日本国の古称の一つに「アキツシマ(蜻蛉洲)」というのがある。トンボそのものも、昔は「アキツ」と呼ばれた。ヤンマを含むトンボとわれわれは深い関係があるようだ。

 これに対し、一般に欧米人はトンボに限らず昆虫に関心が低いと言われる。『ファーブル昆虫記』のような例外はあるが(ファーブルはフランス人)、虫に関する文化の違いは歴史とも絡んでいかんともし難い。