<ダァダアーン! というバースト音が耳を…
<ダァダアーン! というバースト音が耳を劈(つんざ)いた。ハンドルを握っていた娘が悲鳴を上げ、私は、「なんだ、これは」と叫びながらも同時に散弾のようにつぶてがわが車に襲いきた。>
大事なく幸いであったが、作家の佐伯泰英さんが、小田原厚木道路の上り車線で遭遇した一瞬の「事故」について記している(「佐伯通信」第38号=新潮文庫『新・古着屋総兵衛<にらみ>』付)。ガードレール支柱にぶつかった下り車線の車のタイヤが宙を飛び、佐伯さんの車の前部を大きく破損しながら擦れ違った。
車載カメラが一部始終を記録していて、何が起きたのか分かったという。先月10日に愛知県新城市の東名高速道路で、中央分離帯を越えて浮き上がった車が観光バスのフロント上部に衝突した事故が起きたが、これもドライブレコーダーが記録していた。新聞に掲載された連続映像記録を覚えておられる人も多かろう。
大破したバスの乗客乗員45人が負傷したが、あれほどの事故でも死者が出なかった。シートベルト着用のおかげだとバス添乗員が語っていたことに留意したい。
今年上半期の全国の交通事故による死者数は1675人。67年ぶりに4000人を下回る年間3905人で、戦後3番目に少ない記録となった昨年同期と比べて152人の減である。
このペースでいくと今年は、昭和23(1948)年の3848人、戦後の最少記録となる翌24年の3790人を下回る可能性が高い。