「石槌は四国の屋根よ山開」(山田眉山)…
「石槌は四国の屋根よ山開」(山田眉山)。7月に入ると蒸し暑さが耐え難くなり、夜も眠れなくなるので、エアコンが手放せない。一方、レジャーで海や山に出掛ける人が増える季節でもある。この時期に行われるのが、山開きや海開きのイベント。
稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』では、季語の「山開」について「夏は、信仰のため、スポーツのための登山が多い。梅雨が明けて炎天が続くようになると、山が落ち着いて危険が少なくなり、誰にでも登りやすくなるからである」とある。
確かに夏に登山が解禁されるのは、冬山と違って凍死や雪崩の危険がないということもある。しかし、それ以前に、かつて山は神々が宿る聖なる地と考えられ、自由に登れなかったことを忘れてはならないだろう。山の神に祈って登山の許しを得るのが山開きである。
江戸時代に盛んになった伊勢参りも、観光を伴う宗教的な行事だった。神に参詣するとともに物見遊山をする。日本全国が伊勢参りに熱狂したのは、見知らぬ土地で飲めや歌えの宴会旅行を楽しむというレジャー的側面があったからだ。
特に伊勢神宮には、今の観光ガイドに当たる御師(おんし)がいたため、もてなしが充実していたことは知られている。いわば、現在の団体旅行の先駆けである。
海や山では水難事故や遭難などに注意したい。最近よく報道されるクマによる被害にも気を付けて夏のレジャーを楽しんでほしいものである。