桜の開花日ほどに注目度は高くないが、桜より…


 桜の開花日ほどに注目度は高くないが、桜より少し遅れて日本列島を東上、北上したのが今年のモンシロチョウの初見(しょけん)日である。ウェザーテックの「生物、季節観測」では、松江、横浜、奈良で14日、水戸で15日、仙台で16日、新潟、札幌で17日が初見日。

 札幌を除いて、いずれも平年より1週間以上遅い。万物が生き生きとした様子の「清浄明潔」を略した二十四節気の清明(せいめい)は今月4日で、明後20日は「雨が降って百穀を潤す」穀雨である。

 暦の上では晩春だが、東京では昨日、一昨日と夏日(最高気温25度以上)が連続し、初夏の到来を思わせた。桜の後を追うハナミズキがちらほら咲き、つぼみを膨らませた道端のツツジも出番を待っている。

 俳句ではチョウもツツジも春の季語だが、すぐ後に迫っている初夏の兆しを感じ取ったかのようだ。陽気につられて♪みどりのそよ風 いい日だね ちょうちょもひらひら 豆のはな……と、つい童謡を口ずさみたくもなる。

 明るさを増す陽光の下、若葉が萌え、百花が咲き、チョウが舞い、鳥がさえずり歌う。自然が華やぐ季節の到来である。

 今年はまだ出逢(あ)いがかなわないが、昨年の今ごろに近くの公園の小さな林で、クロアゲハチョウを見掛けた。「こんな所で」と驚きつつ、優雅な胡蝶の舞に、しばらく見とれていた。光の加減で高貴な紫色がかって見えるクロアゲハの、神秘的な太古の舞を今年も眺めたいと心ときめくのだ。