「古物商の店頭で積まれていた反故紙。(その…


 「古物商の店頭で積まれていた反故紙。(その反故紙によって)再生された衣服は、他の繊維にない紙繊維特有の材質感を持っています」(岡嶋多紀著『不思議な一粒』)。

 和紙を素材にした衣服の展示会やファッションショーを各地で開き、和紙の魅力を伝えているテキスタイルデザイナー・岡嶋多紀さん。3月に都内で行われた「和紙を着る」展では、明治期に商人が使い古した「元治元年金銭出入帳」いわゆる大福帳の和紙(細川紙)から生まれた婦人服が展示された。

 大福帳の1枚1枚を破り取り、細かく刻んだこよりを撚(よ)り機にかけて糸を作るという、気の遠くなるような作業だ。大福帳に書かれた文字や数字の墨黒は、生地に無数の点々として浮かび上がり濃淡の精彩を生み出している。

 反故紙からできる紙布の美について、岡嶋さんは「日本の紙は1000年の命を宿すとたたえられており、その1枚の紙から糸を作り、美しい布として生き返るのです」と“再生と循環の美”を強調する。

 和紙はこうぞ、みつまたを素材に手漉(す)きによって作られるため、強度があり保存性に優れている。くだんの細川紙は2014年、本美濃紙、石州半紙とともにユネスコ無形文化遺産に登録された。

 ほかに越前紙や、現在も奈良・東大寺の「お水取り」で修行僧たちが着用する紙衣の白石紙などがよく知られる。20年五輪イヤーに向け、日本文化の発信強化が進む中、和紙も広く伝えていきたい。