愛媛県松山市は俳句文学を大切にしてきた町…
愛媛県松山市は俳句文学を大切にしてきた町。正岡子規、高浜虚子、中村草田男ら優れた俳人を多数輩出してきた。そして今、ここは高校生らが俳句の創作力、鑑賞力を競う「俳句甲子園」の舞台になっている。
今回、俳人協会新人賞を受賞した櫛部天思さんは、地元の高校で俳句を指導している熱血漢教師。伯方高校在職中、俳句部を興し、第3回俳句甲子園で全国優勝を勝ち取らせた経験を持つ。
今は松山中央高校に在職し、愛媛県高等学校文化連盟文芸専門部長の要職にある。幼少から俳句に親しんできて、高校に教師として赴任した時、阪本謙二さん主宰の「櫟(くぬぎ)」に入会。主宰者も国語教師だった。
現在の「櫟」主宰、江崎紀和子さんによれば、師の阪本さんは櫛部さんに大きな期待を掛けていた。「しかし、『早く身を固めなさいよ』など身辺のことに口をはさむばかりで、肝心の俳句に口を出すということは余りなかった」(受賞作『天心』序に代えて)。
この句集は阪本さんに捧(ささ)げられている。阪本さんは櫛部さんの句集を待ち望んでいたが、それを見ないまま黄泉の国に旅立ってしまった。句集名は「天心に星のあがりし寒鮃(かんひらめ)」の句から付けられた。
天上の星になった師の心にかないたい、との願いを表現している。学んだのは「日本語を大切に自然体で詠む」姿勢であり「絆への感謝」。櫛部さんは海辺にある勤務校を「海峡へ校旗を掲げ秋澄めり」と詠んだ。仕事への喜びと誇りが伝わってくる。