「一月往(い)ぬ、二月逃げる、三月去る」…
「一月往(い)ぬ、二月逃げる、三月去る」。去り行く3月も、昨日が<暑さ寒さも彼岸まで>の春分の日で、あと10日となった。やや遅れ気味という桜前線も、これから急ぎ足となって東上し、いつものようにあでやかに風景を彩るであろう。
桜の前に、急ぎ足でやって来る生き物に、ウグイスがいる。ウェザーテックの「生物季節観測」では、あの「ホーホケキョ」を初めて聞く「初鳴日(しょめいび)」が横浜で、この19日。宇都宮では17日、水戸で16日、静岡で14日だった。
いずれも平年より2日から8日遅い観測である。地方ではウグイス前線の東上が観測されているが、都心では「春告鳥(はるつげどり)」と呼ばれるウグイスが春を告げなくなって久しい。平成12(2000)年を最後に鳴き声を確認できていないという。
もっとも確認は、気象庁職員が東京管区気象台のある大手町周辺や北の丸公園で行うもので、都内からウグイスが消えたというのではない。現に気流子は朝ウオーキングの功徳で、今月上旬に仙川(東京・世田谷区)沿いのコースで、まだ少し不十分な「ホー(ホ)ケキョ」を聞き、満足に浸ったものである。
とはいえ、観測対象の中には近年、都市化の影響で都心では見掛けなくなった生き物もいる。このため東京ではモンシロチョウやヒバリなどの観測が、平成23年から外された。
生物の生きられる環境空間がどんどん狭まり、身の回りから生き物が遠ざかっていく中で、季節感が失われていくのである。