6年目の3月11日を迎えた。あの時受けた…


 6年目の3月11日を迎えた。あの時受けた衝撃、悲しみ、苛(いら)立ち、やるせなさが蘇(よみがえ)ってくる。まして実際に被災した人たちの思いは、比べものにならないだろう。東日本大震災が戦後の日本が体験した最大の悲劇であったと改めて思わせられる。

 6年間で復興はどれだけ進んだのか。元の生活が戻った所もあれば、避難した住民が戻ってこない村、そして福島第1原発事故の影響でいまだに立ち入りも禁止された区域がある。

 風評被害の問題も大きい。福島県では、2012年から県内産米の放射性物質の検査を行い、15年産以降、国の基準値を超えたコメは見つかっていない。にもかかわらず、取引価格は低迷したままだ。

 風評被害との戦いは、生産者だけでなく、流通業者や消費者の側にもある。いや、生産者以外の方こそ必要ではないだろうか。

 しかしそれ以上に心が痛むのは、事故で県外に避難している子供たちへのいじめが起きていることだ。故郷を離れ散り散りになった子供たちへ同情こそすれ、いじめや差別を行うとは何事だろうか。松野博一文部科学相は、いじめの実態調査をする考えを明らかにしたが、児童・生徒に対しては、そんないじめが、いかに恥ずかしい行為か強く戒める言葉が欲しい。

 震災以降、「絆」が日本国民の合言葉となった。それがなぜ、いじめを生んでしまったのか。風評被害といじめについては、国民一人ひとりが、自分たちの責任として省みる必要がある。