「三田文学」(三田文学会発行)の「新同人雑誌評」…


 「三田文学」(三田文学会発行)の「新同人雑誌評」は、2008年に終了した「文学界」(文芸春秋発行)の「同人雑誌評」を引き継ぐ形で始まった。

 ところが127号(16年11月)を見ると、それまで10㌻程度あった同人誌評が1㌻になってしまっていた。10分の1への大幅な削減だ。「?」と思って「編集後記」(編集長福田拓也筆)を見たが、この件への言及は全くなかった。

 だからと言って、「三田文学」による同人誌の扱いがひど過ぎる、とは思えない。そういうものなのだろう。文芸同人誌全体のエネルギーが近年、急速に低下している現実があるからだ。

 「文学界」が同人誌評を廃止したのも、そんな流れを見越してのことだった。同人誌に書く人が「文学界」の読者の中で一定の勢力を占めていたのだが、そうした読者が急速に減ったことが廃止の理由とされた。同じことが8年遅れて「三田文学」にも起こった、ということなのだろう。大きな変化が生じている。

 もともと同人誌は、地域であれ人脈であれ、狭い範囲にしか流通しない。このため、同人誌を俯瞰(ふかん)する全国的視点が必要だ。同人誌評は、そういう役割を果たしていた。

 だが最近は、同人誌ではなく新人文学賞によって文壇に登場する作家が多い。インターネットに自分の文芸作品を掲載することも簡単にできるようになった。「三田文学」同人誌評の大変化も、このような流れの中にあると見た方がよさそうだ。