長野県の鉢伏山(1929㍍)の山中で、9人が…
長野県の鉢伏山(1929㍍)の山中で、9人が亡くなった県の消防防災ヘリコプター墜落事故。ヘリを操縦していた岩田正滋さん(56)は、飛行時間5100時間の熟練パイロットだった。
「操縦は一番信頼できた。彼が来たら大丈夫、そんな人だった」。山岳ガイドの村上周平さん(60)は、岩田さんの人となりを振り返り、「安全面は特にシビアにやっていたはず。信じられない」と沈んだ声で話す。
プロペラを下にして、地面に垂直にたたき付けられたようなバラバラの機体が無残だ。救護・救難活動で、とりわけヘリのコントロールは容易でないことを改めて見せつけた事故だった。
ヘリの場合、突然エンジンが止まっても機体の降下によって生じる空気の流れを利用して軟着陸することが少なくない。今回がそうでなかったのは、想定外の気流の変化に襲われた機体が枝などに接触し、一気に墜落したのか? 徹底的な原因究明が必要だ。
日本は急峻な山並みが続き、その地形も複雑で、こぢんまりとした山中の風景が特徴的だ。そのため山岳事故が生じた際、ヘリによる救助活動には大きな危険が伴う場合が少なくない。
今後、ヘリの大小のトラブル、事故情報の蓄積や共有化を進め、救助活動に生かすべきだ。ヘリの操縦技術レベルは平均して欧米のパイロットに比べ見劣りしないと言われるが、不測の事態への対応という点ではどうか。この点の検証も求められる。