アパホテルの客室に置かれた書籍をめぐって…


 アパホテルの客室に置かれた書籍をめぐって、中国外務省が批判した問題が波紋を広げている。中国での反発を受け、冬季アジア大会の組織委員会は、札幌市内の同ホテルが選手団の宿泊先になっていることから、本の撤去などを打診したという。

 書籍はアパグループの元谷外志雄代表の『本当の日本の歴史 理論近現代史学Ⅱ』で、いわゆる南京大虐殺について「攻略時の南京の人口が20万人、一カ月後の人口が25万人という記録から考えても、あり得ない」などと否定している。

 中国の批判に、元谷代表は「日本には言論の自由がある。著書は置き続ける」と毅然と対応している。この問題で、今月末から春節の大型連休に入る中国では、数日前から同ホテルのインターネット予約ができなくなっている。ある程度の営業的なダメージは、免れないだろう。それも覚悟の上での元谷代表の方針と思われる。

 南京事件についてはさまざまな研究があり、史実として確定したとは言えない。しかも、外国の民間歴史研究家が書いた書物について、当局がとやかく言うのは、過剰な反応と言わざるを得ない。

 アジア大会の組織委としては、大会の支障を取り除きたいところだろう。しかしNHKの報道によると、ホテル側は「組織委からの正式の申し入れはなく、依頼があっても撤去する考えはない」と答えている。

 ことは言論表現の自由、信念の問題。こういう志を持った経営者は日本にとって貴重である。