第156回芥川・直木賞が決定した。芥川賞は…


 第156回芥川・直木賞が決定した。芥川賞は山下澄人さん、直木賞は恩田陸さん。それぞれ4回目と6回目の候補で栄冠をつかんだベテランだ。最近は複数回の候補を経て受賞に至るケースが少なくない。

 もちろん、第153回の又吉直樹さんのように初候補で受賞する場合もある。もともと芥川賞は新人賞、直木賞は実力と実績を評価した賞という性格を持つが、必ずしも絶対ではない。特に芥川賞は、何冊も単行本を出している作家が受賞したこともある。どこまでが新人か、という線引きが難しいようだ。

 そのあたりは、選考委員の議論にもなっている。その時の候補作の水準や雰囲気によっても変わる。その点では、賞の評価基準に一貫性が感じられない。川口則弘著『芥川賞物語』(文春文庫)は、こうした芥川賞の変遷をたどっていて興味深いものがある。

 それによれば、1年に2度も新人を選ぶことの困難さがある。また、他の新人賞が乱立しているため、受賞が重ならないようにする配慮も必要だ。

 ことに受賞作無しとなれば、マスコミが文学の不振に結び付けるのもおかしな風潮であると述べているのは、正当な指摘と言っていい。芥川賞の動向が文学の盛衰の象徴と受け止められるようになったのは、マスコミの影響であることは間違いない。

 テレビ映えのする若い女性が受賞すれば、タレントのようにもてはやすのも、その一つ。「たかが芥川賞、されど芥川賞」である。