評論家の小浜逸郎さんが「老人運転は危険か」…
評論家の小浜逸郎さんが「老人運転は危険か」(Voice1月号)の中で、世の“常識”に反し「若者より高齢者のほうが事故を起こす割合ははるかに低い」という資料を紹介している。
これによると、免許保有者のうち65歳以上の高齢者が占める割合は17%。しかし、全体の事故件数に占める高齢者ドライバーの割合は16%で、20代の21%(保有者割合は14%)、30代の19%(同20%)に比べても低い。
また年齢層ごとの事故発生率でも16~24歳の事故率は1・54%であるが、65歳以上は0・72%である。これを踏まえ、小浜さんは「認知症の人は別として、高齢者は概して自分の心身の衰えをよく自覚していて、また経験も豊富なので、慎重な運転を心掛けているということになる」と。なるほどと思う。
今、自動車業界では衝突防止装置が重要なセールスポイントとなり、2020年までの自動運転車実用化も目指している。ところが、こうした技術の開発は、あくまでセンサーの鋭敏さを追求するものだ。
より早く妨害物を見つけることや、より精密に路上の状態を探り出すことなどが目標となっている。豊富な運転経験を持つ人間の危機管理や判断の能力を反映させるところまでには至っていない。
自動運転による安全対策に、高齢者の経験知をいずれ生かしたいと業界が宣言するだけでも、世間の「老人運転」に対する見方が変わるのではないか。