映画は世界で起きていることを知るための…
映画は世界で起きていることを知るためのよい手掛かりになる。米国は今も海外に兵士を送り出していて、映画でも戦争の新たな形態や兵士の苦悩、家族の悩みなどさまざま描かれている。
テロ組織の首謀者ビンラディン容疑者襲撃を映画化した「ゼロ・ダーク・サーティ」。遺族に兵士の死を伝えるドラマ「メッセンジャー」。無人飛行機で敵を攻撃する兵士の物語「ドローン・オブ・ウォー」等々。
来春公開される「マン・ダウン」は、戦場で心の傷を負った兵士の内面を追った作品。故郷に帰っても心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しめられる様子を、彼の目に世界がどう見えるかによって描く。
一方、見なければよかったと思う映画も少なくない。完成度が低いためでも、俳優の演技がまずいためでもない。製作者が人間をどのような存在として認識しているのか、唯物的で冷酷無慈悲な扱い方にぞっとさせられるからだ。
そんな例の一つに「クリーピー偽りの隣人」があった。一家失踪事件の内側にあった異常な犯罪を扱ったサスペンスだ。この作品に携わることで俳優はどんな内的体験をしたのか。それが気になった。
犯罪者役を演じた俳優の裏表ある演技は秀逸。心に留めていたら、彼が離婚したというニュースが流れた。俳優の演じる役柄とプライベートは全く別だろうが、映画での演技の印象が強かっただけに現実の展開が気になったのである。