「満天の枯野の星のみなうごく」(松本浮木)…


 「満天の枯野の星のみなうごく」(松本浮木)。公園の木々の枯れ葉が落ち、明るい空が広がっている。敷石の道には、時々ハトが舞い降りて来てエサをついばむ。この冬枯れの中で虫が活動しているのかどうかは分からないが、ハトがせっせと首を動かす様子を見ると、やはり生きているのだと実感する。

 ベンチには老人が座り、じっと何かを見詰めるようにしている。ハトを追う子供を連れた家族など、ごく当たり前の光景が眼前に広がる。冬の日差しの中、緩やかに時間が過ぎていく。

 もっとも、他の月にも同じような光景はあったはず。だが12月には特別なもののように思われるのは、1年の終わりの月だからだろうか。

 木々が葉を落とす秋から冬にかけての季節は、どうしても人生の後半期、高齢者のイメージと重なってしまう。かつて、絵本の『葉っぱのフレディ』がブームになったことがある。

 最初は枯れ葉となって落ちる「死」を怖がるが、やがて大地に帰って新たな生命を生み出す肥料となることで安心を得る。生きることの意味を知るための教材として、大人の寓話(ぐうわ)としてもよく読まれた。

 「古書肆に寄りて間のある年忘」(高木石子)。年の瀬は、1年を振り返る忘年会の季節でもある。良いことも悪いこともすべて忘れてしまえるかどうかは別として、祭りの後の宴会である直会(なおらい)のように、この行事には気持ちに区切りを付ける意味があるのだろう。