ロシアの民芸品にマトリョーシカ人形がある…


 ロシアの民芸品にマトリョーシカ人形がある。日本のこけしに似ているが、一番の特徴は中が空洞になっていて小さな人形が入っていること。それを開けるとさらに小さな人形が出てくる。

 安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領の会談が終わって、マトリョーシカのことを思った。今度こそ、日本固有の領土・北方領土返還に向けた何らかの道筋が見えてくるのではとの期待を持った向きもあるだろう。しかし蓋(ふた)を開けてみると、ロシア側からは以前と同じような反応しかなかった。

 これまでに安倍首相はプーチン氏と何度も会談を重ねてきたが、肝心の領土返還への希望は、マトリョーシカのように蓋を開けるほど小さくなっていくようだ。

 もちろん首脳間の信頼醸成が第一ということは分かる。支持率が80%近いプーチン氏と、長期政権を睨(にら)む安倍政権の時こそ、領土問題解決のチャンスと言われる。しかし、どうしようもない難しい客観情勢があるのも事実。

 マトリョーシカは、明治時代日本に来たロシアの修道士が、箱根細工の入れ子人形を土産に持って帰ったのが起源、という有力説がある。高山正之氏の著書によると、ロシアの博物館では箱根七福神の入れ子人形が展示されているという。

 ロシアもマトリョーシカが日本起源と認めるのにやぶさかでないようだ。しかし、戦略的な重要性を増す北方領土が、本来日本の領土であることを認めることはできないのである。