わが国の自然科学系の賞で最も伝統がある…
わが国の自然科学系の賞で最も伝統がある仁科記念賞に今年度、高柳匡・京都大基礎物理学研究所教授(41)が選ばれた。
複数の粒子がセットで状態の重なりをつくる「量子もつれ」という現象の研究が対象だ。同賞の受賞者は今回を含め183人で、このうち梶田隆章東京大宇宙線研究所長(57)ら6人は後にノーベル物理学賞を受賞している。
一方、授賞式が行われた第32回京都賞の基礎科学部門では、がん免疫療法の発展に貢献した本庶佑京都大名誉教授(74)が受賞した。仁科記念賞は比較的若い研究者に、京都賞は広く世に認められた一級の科学者に贈られる。
京都賞の方は稲盛財団(理事長・稲盛和夫京セラ名誉会長)が運営しており、賞金額も5000万円と大きい。「科学立国」のわが国であれば、仁科記念賞、京都賞レベルの賞が、もう二つか三つあっても決して不思議ではない。
若い研究者を顕彰したり支援したりする機関は、さらに倍してあるべきだろう。そうすれば研究者のステータスアップにつながり、彼らの社会的貢献への意欲もさらに増そう。
ノーベル物理学賞受賞者の小柴昌俊氏が創った平成基礎科学財団が資金不足で来年3月末で解散することになったが、とても残念だ。今、国立大学に対する運営費交付金が縮小され基礎研究の力が削(そ)がれる危機意識が高まっている。その穴埋めとまではいかないが、民間がもっと力を貸すべきではないか。