アメリカン・エンタープライズ政策研究所…


 アメリカン・エンタープライズ政策研究所客員研究員の加瀬みきさんが「長い選挙戦に慣れている専門家たちですら、嫌気が差すほど疲れる、醜い選挙戦であった」(小紙10月30日付ビューポイント)と。

 その米大統領選の期間は、国民がさまざまな所で政治談義を行い、一体感を確認する機会でもある。現職大統領の実績を評価し、国の新しい方向を定めるシステムであり、国を“自浄”する機能もある。

 ところが今回、クリントン氏とトランプ氏の戦いではその機能が働かず、選挙後の政治情勢を見通せない上、政党、社会各層間の亀裂がさらに広がることも予想される。米国の誇る大統領選の仕組みが十分生かされていない。加瀬さんの「疲れ」もそこにあろう。

 両氏は総体的に、政治不信の解消を目指したと言えよう。しかしクリントン氏は国務長官時代の私用メール問題、トランプ氏は女性蔑視発言の対応に追われてしまった。

 結局、日本などが神経をとがらさざる得ない通商政策でも議論が深まらなかった。候補者らの資質の欠如によって、米国民の政治不信は解消するどころか、かえって強まったと思われる。

 米国で起きていることは将来、日本でも起きる、とよく言われる。日本の場合、急激な少子化による社会保障制度や経済への不安で、政治不信がさらに高まる公算が大きい。その払拭(ふっしょく)に向け、制度改革や規制緩和に努めなければならない。