去年の事だったが、大手スーパーの持ち帰り…


 去年の事だったが、大手スーパーの持ち帰り寿司を買って食べようとしたところ、ワサビが入っていなかった。驚いたが、ミスでも何でもなく、ある時期から「さび抜き」で販売しているとのことだった。「子供にも食べてもらおう」との発想だろうか。

 そこへ持ってきて、今回のワサビ騒動だ。大阪の寿司店で、特に外国人に対してワサビを多量に使った寿司を出した、という話。寿司店の言い分は、こうした寿司を希望する外国人客が多いので、とのことだ。

 外国人であれ日本人であれ、ワサビについての好みはさまざまなはずなのに、一律に対応したのが騒動の原因だろう。

 網目が10センチの粗い網で魚を獲(と)って「この海には小魚がいない」と断定するのが誤りなのと同じパターンだ。一人一人に丁寧に接客すれば、問題は回避できたはずだ。

 ワサビといっても、本物のワサビを使うような店であれば「うちはこのやり方でやってますので」と言って多量使用要求はキッパリ拒否するだろう。迎合しない、との意志は明確だ。

 カレー屋などでは「3倍」「5倍」といった数字で辛さの程度を示す店も多い。これなら大丈夫だろうと思って、控えめに「3倍」に挑戦したものの、あまりの辛さにセキが止まらなかったが、「頼んだ以上は食べよう」と考えて完食したバカバカしい思い出もある。食の好みは千差万別だ。好み自体に良いも悪いもあろうはずがない。