音楽や演劇の舞台で観客の注目を集めるのは…


 音楽や演劇の舞台で観客の注目を集めるのは、演じているパフォーマーだ。衣装やヘアメークの担当者は、表には出ない。だが、彼らもまた舞台を作る上で極めて重要な役割を担っている。

 デザイナーの時広真吾さんは、主に舞台で使われる衣装をデザインしてきた人だが、それらはダンサーや演奏家や役者たちからも高く評価されて、芸術品としての価値付けがなされている。

 それらの衣装はよく「文学的な抒情(じょじょう)」と言われる。ガウンなどに使われる布地も辻が花、つづれ織り、イタリア製ふくれ織りなど、繊細にして華麗、豪華なもので、衣装自体が幻想的な物語を秘めているかのようだ。

 強い個性のある衣装が、演じる人の個性をさらに引き立たせて、幽玄の世界へと誘う。それらの舞台衣装を披露するユニークなパフォーマンス「青蓮と美しき才能たち」が先日、東京の中目黒トライで開かれた。

 青蓮さんは時広さん専属のパフォーマー。美しき才能たちとは横笛の朱鷺たたら、モードの三島亜希子、ジャズ・モダンダンスの若林美津枝、フラメンコの箆津弘順、インド古典舞踊の野火杏子、コンテンポラリーダンスの陳必勝の6氏。

 前半がソロ、後半が青蓮さんとのコラボで、主題に中空一(なかぞらはじめ)の筆名で書かれた時広さんの詩が使われた。「どんな王宮で演じても、恥ずかしくないように心掛けてきました。悲しみも苦しみもみんな愛(いと)しさに変えていきたい」と時広さんは語る。