小欄は昨日に続いて、ノーベル医学生理学賞…


 小欄は昨日に続いて、ノーベル医学生理学賞受賞者、大隅良典東京工業大栄誉教授の話題。受賞決定後の記者会見ではよくあるように、今回も「それは何に役立つのですか」との質問が出た。

 それ、とは解明され受賞理由となった「オートファジー」。細胞内でタンパク質を分解しながらアミノ酸として再利用していくシステムで、その作用によって細胞の生命が維持される。

 質問に対し、すぐさま大隅氏は「それが生命の本質だとすれば、そのことの理解なしにはいろいろなことはできないだろうと思います」と答えた。証拠を提示して「これが生命の本質だ」と言える人が、果たしてこの世に何人いるだろう。大隅氏のすごさであり、科学の醍醐味だろう。

 大隅氏は若い時、「一体何が起こっているんだろう」という現象を顕微鏡で見つけ、それが研究のスタートになった。「研究の過程で、いつでもそこに帰れる現象を自分のうちに持っていること」「それが研究を続けられるモチベーションだ」と。

 他の科学者は素通りした現象にこだわり続け、ついにオートファジーを見つけ出して解明。今では関係論文が年に5000本に上るという重要なテーマになった。

 昨年、同じくノーベル医学生理学賞を受賞した大村智氏もまた、誰の関心も呼ばなかった微生物の中に有用な薬の原料を発見、その仕組みを解明した。ともに、自らの内に“真理の原型”を抱き続けた、信念の人だ。