「引揚ぐる船を追ひ打つ秋の浪」(高浜虚子)…
「引揚ぐる船を追ひ打つ秋の浪」(高浜虚子)。薄着をして昼寝をしていると、寒さに目覚めてしまうような天候。あっという間に夏が終わった感じだが、次々に襲来する台風によって残暑が吹き飛ばされたという印象だ。
そんな肌寒さや虫の声の中で、秋が到来したようだ。と思っていると、窓から見えるサクラの葉の一部が紅葉しているのを発見した。
まだ多くは緑を保っているのだが、黄色や赤に染まった葉は、少しの風にも揺れ動き、ちらほらと落ちている。それを見ると寂しい気持ちになる。人生の晩年を垣間見るような気がするからだ。
少しずつ秋の気配が濃厚となり、そして本格的な冬を迎えるのだが、それは年々、体力の衰えを感じ、頭髪が薄くなって、いつの間にか老化を強く意識させられているのと似ている。自然のサイクルと人間の一生には相通じるものがある。
とはいえ、まだ本格的な紅葉の季節には早い。天候の上でも過ごしやすい時期である。この際、書棚の肥やしとなっていた本に挑戦してみるのもいい。地方に住んでいた少年時代、書店の包装紙に「人生は短い。貴重な時間を無駄にしないために価値のある本を読め」といった趣旨の格言が載っていた。
確かラスキンの言葉だったと思うが、気になりながらも、古典などの価値のある本を敬遠していた。古典を読むようになったのは受験のプレッシャーから解放された大学生になってからである。