健康問題は誰にとっても、人生の重要テーマである。これが一国の大統領や首相、ないしは将来国のトップとなるような人物の場合、国の行方をも左右する。

　かつて安倍晋三首相が体調不良を理由に突然辞任を表明し、第１次安倍内閣が約１年の短さに終わったのも記憶に新しい。その後再び政権に返り咲き、４年近く政権を維持できているのも健康回復のおかげである。

　安倍首相の祖父・岸信介と自民党総裁の座を争い首相となった石橋湛山は、病気のため在職６５日で首相の座を岸に譲った。岸は日米安保改定という大仕事を反対の嵐の中で成し遂げた。もし石橋が首相を続けていた場合、日米安保もどうなっていたか分からない。

　米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏が肺炎と診断され、カリフォルニア訪問を中止したことから、健康問題が大統領選の焦点の一つに急浮上した。大統領の激務をこなすには、並外れた体力と精神力が要求される。

　その後、クリントン氏陣営は「大統領の職務を果たすのに適している」との主治医の診断書を公表、１５日には遊説を再開した。一方、共和党候補ドナルド・トランプ氏陣営は、健康診断を元に、血糖値、コレステロール値、肝機能など各種数値が正常であるとし、「過酷な大統領の職務に耐えるスタミナがある」と健康をアピールした。

　超大国米国の大統領候補の健康問題ともなれば、世界の行方をも左右する。大いに気になる。