国内有数のハス群生地として知られる滋賀県…


 国内有数のハス群生地として知られる滋賀県草津市の琵琶湖岸で、例年夏には湖面を埋め尽くしていた花や葉が姿を消しているという。ハス群生地は約13㌶と広大な面積だ。

 ハスの群生は1970年代から確認されているが、葉や花が見られないのは初めてだという。例年は6月から葉が湖面を覆い、7月中下旬には花を咲かせ、多くの観光客が訪れ、楽しませてくれる。

 ピンクのハスの花で染まる景色はさぞ美しかろう。その清浄さもひときわ魅力的だ。「日本人に深い精神的内容を与えた仏教は、蓮華によって象徴されているように見える」「蓮華の咲きそろう浄土の幻想がある」(和辻哲郎著『巨椋池の蓮』)。

 またレンコンは、日本人にもっとも馴染(なじ)みのある伝統野菜の一つ。レンコンのきんぴら、煮物、酢れんこんに始まり、ひき肉はさみ焼き、豚肉巻き……。庶民的メニューから高級料理にまで使われ、他の食材ともよく合う。

 それはさておき、琵琶湖のハスが一斉に消えたことで、滋賀県などが湖底の地下茎を調査したところ、多くが腐敗していることが判明した。当局は「食害や病気、寿命などが考えられるが、特定できない」としている。

 気候変動による海の水質汚染については、国際的な研究調査も続き、その対処は曲がりなりにも進んでいる。一方、地域の川、湖のそれは遅れがちで、琵琶湖もその例に漏れない。調査の継続を徹底することだ。