大学の夏休みは8月に入ってから始まるところ…


 大学の夏休みは8月に入ってから始まるところが多い。そして長い。2カ月以上になるところもある。教授ら研究者にとっては学生の指導のほかに、まとまった研究時間が必要なためでもある。

 気流子も学生時代、体育会系の部活でキャンパスに行くと、ゼミの教授と顔を合わせることが多かった。夏休みが終わって授業が始まると、教授がどのような研究をしていたのか聞かせてくれた。

 学生たちも時間が自由になり、どう過ごすかは将来を左右する。1884年12月から88年4月まで米国で学んだ内村鑑三にとって、そこで過ごした3度の夏は有益で、深く記憶に残るものとなった。

 1度目はグロースターの漁港で漁業調査と論文執筆、そして瞑想と祈祷。2度目は前年働いたエルウィン知的障碍児養護院で測量のアルバイト。3度目はギリシャ語とヘブライ語の猛勉強。

 2度目の夏にエルウィンに行ったのは院長の誘いからだった。「彼は院内の一室を余に供し、余をして彼の傍に食せしめ、客人の到る毎に余を紹介し、余の再来を喜ぶ恰も父が其子の帰省を悦ぶが如くなりし」(「過去の夏」)と記す。

 ある日、院長から額面5000ドルの株券を運んで取引所の人物に渡すよう依頼される。「もし私がこれを持ち去ったらどうしますか」と質問すると「持ち去ってよい。君なら人類のために善用する道を知っている」と返答。内村は米国で信認ということを学んだのだ。