自然科学では英語が世界語だが、歴史学でも…


 自然科学では英語が世界語だが、歴史学でもその傾向は強いようだ。経済史学者の玉木俊明さんは「私のごときふつうの西洋史研究者でさえ、英語で論文を書き、英語で口頭発表することが急速に増えている」(『歴史の見方』)と記している。

 玉木さんが大学院に入った1987年には考えられなかったことだという。当時まだドイツ語やフランス語の専門雑誌に力があったが、今や英語万能の時代。国際学会からフランス語は排除されたともいう。

 2009年から15年の間に、日本人が国際学会で英語で発表する件数は飛躍的に増えたそうだ。ヨーロッパでも事情は同じで、小国ばかりか大国でも、歴史家たちは多くの読者を求めて英語を使用するという。

 欧州連合(EU)でも同様。欧州委員会の調査報告「ヨーロッパ人と言語」(12年)によると、母語に次いで有用性が高い言語として、67%のEU市民が英語を挙げ、79%が英語を子供に習得させたいと答えた。

 英語を母語とする英国では国民投票でEU離脱を決定した。キャメロン首相は辞意を表明し、離脱交渉は次の首相に委ねられることに。離脱が完了すれば英語がEUの公用語から外れる可能性もある(小紙6月29日付)。

 規則では加盟国が通知した第1言語のみが公用語として採用されるが、英語を通知しているのは英国のみ。この言語問題はEUの行方を大きく左右することになるだろう。