「山開とて歩かねばならぬ道」(稲畑汀子)…
「山開とて歩かねばならぬ道」(稲畑汀子)。7月になり、本格的な夏を迎えたという気分になる。6月でも気温は高い日が多かったのだが、やはり7月や8月に夏のイメージがあるせいだろう。
とはいえ、東京は梅雨明けもまだなので、湿度の高い雨模様の日が多い。街や駅では、リュックを背負った軽装の若者などを見掛けるようになった。夏は旅行やハイキングにはもってこいの季節でもある。
「売店はペンキ塗りたて海開」(前川千花)。1日には「山開き」や「海開き」が各地で開催された。特に、山開きは富士山が有名。新緑の山に登ることは健康にも良いが、人気があるとそれこそ行列をつくって並ぶような登山もある。
山開きや海開きというと、現在ではレジャーの解禁という印象である。だが、明治以来に広まった海開きに対し、山開きには山岳信仰に由来する儀式的な意味も含まれていた。
稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』で「山開」は「夏は、信仰のため、スポーツのための登山が多い。梅雨が明けて炎天が続くようになると、山が落ち着いて危険が少なくなり、誰でも登りやすくなるからである。その夏山の登山開始日を山開という。山によっても、鎮座する神によっても、その日は違う」とある。
最近では、山や海の危険を軽視して遭難や事故に遭うケースも多い。やはり十分な準備をして、自然の織り成す景観や神秘的な造形美を楽しみたいものである。