「不二ひとつうづみ残してわかばかな」(蕪村)…


 「不二ひとつうづみ残してわかばかな」(蕪村)。テレビドラマなどでは、人気を得た配役の役者が視聴者の嘆願によって、退場する予定が変わってしまう例がある。前回のNHK連続テレビ小説「あさが来た」では、主人公あさの姉や五代友厚らがそうだ。

 これは日本だけではなく、韓国などでもあるらしい。もともと物語なのだから、史実と違っても目くじらを立てることもないと言われればそうなのだが、ただドラマの影響は大きいということには注意すべきだろう。

 歴史とドラマや小説の関係はなかなか難しい。時代考証家の本を読むと、事実に重心を置けばドラマとしてつまらなくなるため、さじ加減で苦心するようだ。ただ基本的には、事実を元にしながらも物語を楽しめるように妥協するところは妥協する。

 名探偵シャーロック・ホームズを生み出したコナン・ドイルにも、実は似たような話がある。いったん殺した登場人物を生き返らせたというものである。しかも、それはホームズのことだった。

 物語ではホームズは死んだことになっていたが、読者から「人殺し」などという抗議が殺到した。そのため、ドイルは何とか苦しい設定で復活をさせることになった。

 現在、ホームズの物語が多く読める恩恵を受けているのも、この読者の抗議があってのことである。そのドイルは、1859年のきょう、英スコットランドのエディンバラで生まれている。