「小諸はや塗りつぶされし初夏の景」…


 「小諸はや塗りつぶされし初夏の景」(星野立子)。このところ気温が上がり、初夏というのにふさわしい日々が続く。ゴールデンウイークもほぼ晴天で、各地では潮干狩りなどの光景も見られた。

 初夏というと「入梅の前の、からりとした季節である。野や山も緑の色を増す」(稲畑汀子編)。

 『ホトトギス新歳時記』)のだが、東京ではやや蒸し暑く「からり」とはしていなかったような気がする。初夏というよりも真夏のような暑さで、まるで衣替えしたかのように半袖シャツなどの衣装が目立った。

 衣替えは「更衣」とも書く。従来は季節の変わり目を示す習俗であり、特に俳句では夏を彩る重要な季語になる。

 『ホトトギス新歳時記』には「冬から春にかけて着用した厚手の衣類を薄手の物に着更えることをいう。昔は四月朔日(ついたち)と十月朔日を更衣として、着物、調度を取りかえるのを例とした。また冬の綿入から、袷(あわせ)となり、ついで単衣(ひとえ)、さらに盛夏には羅(うすもの)など、日を決めて衣を更えたものである」とある。

 昔は現代のように暖房や冷房の器具がないので、気温に合わせて厚手や薄手の着物で調節していたことがよく分かる。それだけ自然の変化に敏感だったということだろう。食べ物も季節ごとに違い、旬のものを味わうのが当たり前だった。科学の発達によって現代人は快適な暮らしを手に入れたが、それが幸福に繋がるかどうかは別の問題である。