米大統領選の共和党候補指名争いでは不動産王の…


 米大統領選の共和党候補指名争いでは不動産王のドナルド・トランプ氏の指名獲得が確実となった。勢いはなお、衰えそうにない。

 背景には、過激な言葉で、既成政治に不満な共和党支持者に訴える戦術が奏功したこともあるだろう。しかしそれ以上に、強いリーダーさらに言えばヒーローを待ち望む思いがあるのではないか。

 米国文化への深い洞察で知られる亀井俊介・東京大名誉教授は、米国人は伝統的にヒーローへの待望と崇拝の念が強いことを指摘する。ターザンやスーパーマンを例に「アメリカ人のヒーロー熱は、じっさいほとんど国民的なもの」(「現代アメリカ・ヒーローの運命」)と述べている。

 ヒーローは何よりタフでなければならない。リベラル派をはじめトランプ氏への批判は激しいものがあるが、それに動じる気配はない。叩かれれば叩かれるほど、タフガイの印象を強めていく。

 亀井氏はアメリカン・ヒーローは「アメリカ的生き方」を助け、奉仕すると述べている。トランプ氏もそれを売りにしているようなところがある。

 ただ亀井氏は35年ほど前に発表した同エッセイの末尾で次のように書いている。「ここで必要なのは、彼らの『アメリカ的生き方』なるものが、独善的で単純な自己満足に陥ることなく、ちょうどアメリカが多数の人種の多数の文化を含んで成り立っているのと同じように、多様な価値観をうちに含んで生かすものになることである」