福島県の会津地方には盆地を囲むように古い…
福島県の会津地方には盆地を囲むように古い名刹が数多く点在している。国宝、重要文化財も多い。仏教にまつわる歴史や伝説も豊富で、奈良、京都、鎌倉、平泉と並ぶ「五大仏都」の一つ。
「仏都会津」の名を生んだのは、平安時代の初め、磐梯山の麓に慧日寺を開いた法相宗の徳一上人。室町時代の絵図には複数の伽藍とともに門前町を形成していた様子が描かれているが、伊達政宗によって焼かれてしまう。
磐梯山慧日寺資料館ができたのは1987年。近年、金堂や中門が再建されて、訪れる観光客が多くなった。資料館のそばに日本名水百選「龍ヶ沢湧水」から引かれた水汲み場があり、のどを潤してくれる。
地元の人々の信仰を集めているのは「会津ころり三観音」。会津美里町の中田観音、会津坂下の立木観音、会津野沢の鳥追観音で、寿命が尽きた時、病で苦しまずに安らかに終わりを遂げさせてくれるという。
立木観音の本尊、千手観世音菩薩は808年に制作され、高さ8・5メートル。一木造としては日本最大級で、根は床下にあり、幹にあまりノミを入れていないのが特色だ。像を造った後、お堂を立てたと言われる。
これら会津地方の17市町村の「会津の三十三観音めぐり」が、文化庁により「日本遺産」の一つに認定された。文化財に物語性を持たせて観光振興につなげようとするもの。巡礼には社会見聞の意味もあったが、観光にもその意味はなくなっていない。