一昨年放送のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」。…
一昨年放送のNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」。黒田官兵衛の息子長政が、対立する宇都宮一党をだまし討ちにする。それを知った長政の母、妻、女中らが「何でそんなひどいことを、許さない!」と強く非難する場面があった。
「これって、ヘンじゃありませんか?」と歴史学者の本郷和人氏は異議を申し立てる(『戦国夜話』新潮新書、4月刊)。だまし討ちだから、やり方は汚いに決まっている。だが、暗殺によって戦(いくさ)を回避することも可能だ。双方の犠牲は少なくなる。
女性たちも厳しい戦国の世を生きている以上、時代と全く無関係の生き方はできないはず、というのが本郷氏の指摘だ。
現代の女性像をそのまま400年以上も前に投影することの無神経。女性は常に「清く正しく美しく」生きてきた、とするパターン的思考。当今のそうした流れに違和感を表明する点で同感だ。
歴史の真実は、細かな史実の正否にだけあるわけではない。男であれ女であれ、人間の生き方といった形に残らないものも含まれる。
最近の大河ドラマのホームドラマ(朝ドラ)化は、女性の描き方に関して歴史の真実から遠いものになっているのでは? というのが本郷氏の論点だ。「○○の妻」「××の妹」という設定で女性を主人公にしようとするのも、いかがなものか。無理に無理を重ねるだけではないのか、との思いを禁じ得ない。大河ドラマファンの一人として、本郷説に大賛成。