「また三菱か」とあきれ果てた人も少なく…
「また三菱か」とあきれ果てた人も少なくなかろう。軽自動車の燃費性能を偽装した不正が明らかになった三菱自動車。これまでも2000年と04年に、死亡事故を引き起こしたリコール(回収・無償修理)隠しが発覚し、社と経営陣らに刑事罰まで科されたのに懲りないからだ。
しかも過去のリコール隠しは内部告発により表沙汰になったが、今回は提携・供給先の日産自動車の指摘によるものだったから問題の根は深い。「全社員にコンプライアンス(法令順守)意識を徹底することの難しさを考えている」(相川哲郎社長)とトップが言うのだから、もはや自浄作用に期待は掛けられまい。
過去2度の大不正で三菱自は経営危機に陥ったが、三菱重工業など有力グループ企業の支援を受けて再建のイバラ道をたどった。
ようやく累積損出を解消したのが13年度だが、偽装した燃費性能の軽自動車が発売されたのもこの年だったのは皮肉である。不正の背景として語られるのがダイハツ、スズキの2強との縮まらない性能と販売シェア差への焦り。
それを真っ当な技術開発で競わずに不正で埋めようとしたのなら、技術のプロ、販売のプロとしての誇りや矜持をどこにかなぐり捨ててしまったのか。
三菱自だけでない。昨年発覚した東洋ゴム工業、東芝、旭化成、化学及血清療法研究所のデータ改竄など不正の続発は、技術立国の根幹を揺るがす社会の劣化を示す深刻な問題である。